【ゆゆ式】密に詰まっていて、わかりやすい それが小島正幸。【演出まとめ】

てな感じで、
情報処理部的にまとめてみたの巻。


あいうら』の記事ばかり書くのもあれなので
ゆゆ式』の記事を書きます。


小島さんの演出回には
個人的にも興味があって、整理しておきたいと思っていたので、
良い機会ということで。

1.「役割分担」を示す構図


ゆゆ式4話(絵コンテ:小島正幸、演出:孫承希)より。
4段重ねの縦の構図。
(これだけでも凄い。なかなかお目にかかれない。)


静止画で見るとわかりづらいけれど
実際にアニメで動画として見ると、

こう、A、B、Cと役割分担があって、
それらがレイアウトからちゃんと伝わるようになっている。


A:話し手
B:聞き手
C:傍観者

と、こう、すぐにわかる。
そういうレイアウト。


人物が密に詰まった縦の構図を
横にちょいとずらして、上手い具合に役割分担をしてみせる。


「密に詰まっていて、わかりやすい」
これが『ゆゆ式』における小島正幸演出の肝になっている。



続くカットはお母さん先生(B)が応答するカット。



で、その返し。
手前にA(話し手)、奥にC(傍観者)。


手前と奥とでそれぞれ役割が違う。
野々原ゆずこ(A)が話す。櫟井唯(C)は話さない。
縦の構図を利用した役割分担。




そこにフレームインしてくる日向縁(A)。
当然手前側に入ってくる。
話し手(A)は手前、傍観者(C)は奥。
そういうルールをつくっている。


これが演出における「わかりやすさ」
というもの。

2.小島演出と圧縮度

こんなふうに人物を密に詰めながらも
整然としたレイアウトを組めるのは、
役割分担をしっかりと提示しているから。


だから見る側はわかりやすい。
情報がスーッと入ってくる。


「圧縮された構図は美しい」とはよく言いますが(・・・私の中ではよく言うのです)、
小島さんの演出はなかなか実に良い塩梅に「圧縮」されていると思うわけです。
密に詰まっている、ということです。


密に詰まると、ごちゃごちゃしそうという印象があるかもしれませんが、
役割分担をちゃんと提示できれば、そうはならない。ちゃんと伝わる。
むしろ、少ないカット数で状況説明をこなすことができる。
無駄カットを減らす。これ、演出さん的には超重要。

3.人物が密に詰まった構図


いずれも小島さんの絵コンテ回ですね。
詰めてくる。アップショットで詰めてくる。圧縮されている。
圧縮されているがゆえの、「わかりやすさ」もちゃんとある。



6話(絵コンテ:橘正紀、演出:北川隆之)
人物間の距離が適度に離れている。
こういう撮り方がむしろ最近では普通なのかな。


キャラデザ的には、
アップショットの方が映えそうなのだけれど。
目の位置が顔の中心線よりも上にあって、
コメディタッチの表情をつくりやすい。
だから、アップショットが映える。
というのはあると思う。


逆にフルショットはもちづらいかもね。
あいうら』とかと比べちゃうと、どうしても。
ポージングで粘るのはキツそう。


・・・とか言って、

池畠さん回(3話、7話)だとフルショット、ロングショットを
バリバリに決めてくるから、やっぱりそんなことなかった。
そんなことなかった。ようわからんものだな。演出というやつは。


4.会話に合わせて、場所を移る日向縁


2話(絵コンテ・演出:小島正幸)より。
いつも通り、日常会話に花を咲かす情報処理部員たち。
ここでは、日向縁の位置に注目。
最初は唯の隣にいる。
ゆずこがネタを提供し、唯と縁がレスポンスを返す。
そういう役割分担。


それが

唯をいじる方向に会話が進むにつれて、
縁が唯のそばを離れ、ゆずこ側へと寄っていく。



そして、完成。
いじる側(A)といじられる側(B)。


同じ役割の人物同士は密にくっつけ、
役割が異なる人物同士は遠ざけている。


これをさりげなくやるのが小島正幸さんです。


同じ『ゆゆ式』でも1話(絵コンテ:かおり、演出:橘正紀)だと

こう。
3人が基本的に横並びなのよね。
誰がどういう役割でっていうのがはっきりしない。


一方で、自然な感じが出て、いいのかもしれない。
アニメーター主導のアニメだと、
こういう人物配置の方が、芝居でのびのびと遊びやすい。
のかもしれない。
けれど、小島さんだったら、
こういうふうにはしないのだろうなあと思う。


5.空隙に人物をフレームインの術


4話より。こんな感じに。
相川さんが空いたポジションにフレームインして
収まることで、画面が落ち着く。
そうなるように最初から設計されたレイアウト。



4話より。上ほどではないけれど、
ゆずこの入る位置を最初から計算に入れている。


人物を詰めていく過程の上手さも
小島演出の魅力である。

小島正幸さんまとめ

小島さんのゆゆ式演出について、
特にキャッチーなところを拾って
いろいろと書いてみました。


結論としては、
密に詰まっていて、わかりやすい それが小島正幸。


わかりやすいのは
同時に役割分担をちゃんと提示できているから。


2対1の会話劇とか
そういったありふれた演出の中に
小島さんの技巧が溢れています。


そういったところに着目して見ていくと
さらに深く言及していけそうなんですけどね。


最終話まで見終えたら、
他の回もちゃんとまとめて、記事にしたいなあ。
とか思っていたり。


そんな感じで。