武本康弘演出 後ろに立つ少女 前に立つ少女


境界の彼方』2話
絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督:内藤直
「後ろに立つ少女」って記事タイトルがホラー染みていますが。
武本演出でちょいちょいお目にかかる、後ろに立つ少女&前に立つ少女。
二人で歩いているシーンで、横並びにせず、後を追うように一歩後ろを歩ませる。
後ろに立つことで表情・感情の変化が自然と出やすい状況を作り出します。
このシーンでは栗山未来にフォーカスし、表情の変化、視線の動きをばっちりと撮っています。



前で会話をする三人を背後から見ている栗山未来。
背後に立つだけで、関係性に微妙な距離感が生まれるといいますか、
どこか線引きされてしまったような、
栗山未来が自ら一歩引いて線引きしてしまっているような印象を与えます。
ただ見ているだけの栗山未来は先輩らの背後に立って何を思うのか。
その気持ちは彼女が何を言わずとも自然と伝わってくるような感じがします。



たまこまーけっと』8話
絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督:植野千世子
たまこまーけっと』のチョイ様ですが、
一番後ろを歩いているから、誰にもその仕草を見られないというのがありまして、
そのせいか、体裁を気にせず、浮き立つ様子を垣間見ることができるわけですね。
気が緩んだ瞬間が撮れるわけです。
後ろに立つ少女は気が緩む。どこか自分の世界に浸っているような感じがあります。
川辺に映った自分の姿を見るという行為も虚構的で
(最近だとまどマギの映画でも似たようなシーンがありました)
前を歩く3人と(良い意味で)隔たれている印象を受けますね。



Kanon』6話
絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督堀口悠紀子
後ろに立つ者がいれば、前に立つ者もいます。
前に立つ者は後ろからではどんな表情をしているのかが見えないというのがミソです。
だから、何を思っているのかわからない、
あるいは、感情を隠そうとしている、感情を偽ろうとしているとも見てとることができますね。
前に立つ者にフォーカスしたシーンでは負の感情を読みとれることが多いように思います。



氷菓』1話
絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督西屋太志
このシーンでは最初は横並びで歩いていたのを
途中でわざわざ奉太郎を先に行かせてこのようなシチュエーションをつくっています。
前に立たせることで、先ほどの例と同様に
その内面に抱える苛立ちや葛藤を描き出しているように感じます。



中二病でも恋がしたい!』10話
絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督:内藤直
こんな感じで、前に立つ者と後ろに立つ者を横からバシッと撮るのも良いですな。
勇太の告白シーンであえて向き合わないという選択肢を引っ張ってくるのが
武本さんらしいといいますか。
男が前、女の子が後ろというのも、しっくりくる配置だなあと思います。



涼宮ハルヒの憂鬱』11話
絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督堀口悠紀子
このシーンは長門の配置が前後に挟まれる形になっていて、
ハルヒとみくるの後ろを歩いているのと同時にキョンと古泉の前を歩いています。
何気ないシーンですが、
微妙な距離感を人物配置によって上手く処理しているなあと思ったシーンです。



涼宮ハルヒの憂鬱』11話
絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督西屋太志
上手(かみて)下手(しもて)演出のお手本というべきシーンですが。
それだけでなく、前後でずらして人物配置しているのもポイントですね。
キョンは下手(しもて)にいるのですが、ハルヒよりも前に配置しています。
3年後からタイムスリップしてきたキョンを手前に置く、その当時を生きるハルヒを後方に置く。
というようなニュアンスなども感じられて、このシーンの前後配置は絶妙だなあと思います。
考えこまれたレイアウトだと思います。


とまあ、そんな感じで。
後ろに立つ少女、前に立つ少女という
前後にずらして立たせることで、構図に深みが出る、
意味のある構図が作られるという話でした。
武本さんは好んでこういった構図を使われている印象があります。


閑話休題
境界の彼方』の4話ですが

絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督:植野千世子
このラストシーンが好きです。
演出的には栗山未来を端に置く構図も良いですが、
バストショットで視線の向きや表情を変えながら粘る(長回しする)
という芝居がテクニカルだなあと思いました。
バストショット、アップショットで粘るのって
どうキャラを動かせばいいのかというのがあって
難しい芸当のように思います。



Kanon』6話
絵コンテ・演出:武本康弘
作画監督堀口悠紀子
ここでの月宮あゆの粘り方に近いものを感じました。
沈黙の間をあえて芝居で粘って、カメラを居座らせ続けるという、
そうすることで間を作り出すことが出来るという、
こういう思い切った演出はなかなか、まずアニメーターへの信頼がないと出来ないですし
演出家の引き出しもないと出来ないよなあと。



かと思えば、2話のラストはこのように矢継ぎ早にカットを切っていたりします。
しかも肉!目!鏡に映った後ろ姿!手!とかなり乱暴な繋ぎ方をしている。
(「この手で人を殺したんです」と言う台詞に合わせて手を映すというのが武本演出らしいです。)
この場合、乱暴にカットを切ることで、栗山未来が平静を欠いている様子が演出されています。
2話、4話と、いずれも武本さんの演出ですが、
シーンの文脈によってこのように変えているわけですね。


そんな感じで。
武本さん関連で色々と書いてみました。
境界の彼方』は今後も定期的に記事を上げていくつもりです。
京アニの演出を追うという意味でも良い契機だと思います。