アニメOPEDの“スピード感”

ノリの良いオープニングには“スピード感”がある。
楽曲に合わせて映像が流れていく快感は本編では味わえない特別なものだ。
今期だと『ノーゲーム・ノーライフ』のOPとか、スピード感があってとても良い。


オープニング映像というのは基本的には
そういった「スピード感」や「変化」の連続で出来ている。
具体的に分類すると「加速」、「減速」、「等速」、「(急)停止」、「高速カッティング」、「色彩変化」、「フレームイン/アウト」等々。
これらの要素をうまく継ぎ接ぎして、楽曲のリズムと合わせていくのである。

等速

「等速」表現の場合、
基本的にはオブジェクトが画面の横に(あるいは縦に)等速で通過していくのを撮ることになる。

ノーゲーム・ノーライフ』OP
密着マルチは「等速」を表現するのに使われる。
複数のセルがそれぞれ横にスライドし、「奥行き」や「等速」の動きを生みつつも、
この画面全体のスピード感は一番手前にある柱が担っている。



『俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している』OP
『脳コメ』OPでは手前に机を流している。要は不自然でなければ何を流したっていい。
いや教室に机そんなにないだろとかそういう野暮なツッコミはしない。
手前のオブジェクトというのはたくさん流してこそである。
そうすることでスピード感が一定時間持続する。これが大事。

フレームイン/アウト

スピード感はないが、「フレームイン/アウト」は画面に変化をもたらす。

ご注文はうさぎですか?』OP
空カットから二連続でキャラのフレームイン。
一瞬で「変化」を出せる演出は使い勝手が良い。
「変化」があるとアクセントが生まれる。アクセントがあることで映像が映える。



アクエリオンEVOL』OP
こちらも「キャラ出現演出」の好例。

加速、減速

たとえば、奥から手前へ、手前から奥へ、といった動きは「加速」や「減速」を演出する。
奥にいくほど動きが遅く、手前にくるほど動きが速く見えるからである。

ノーゲーム・ノーライフ』OP
このカットではその両方をやっている。
・奥に行く(減速)…黒い鳥とテト
・手前に来る(等速)…チェスの駒
「加速」や「減速」は「等速」とは違って、スピード感の持続はない。
そのかわり、アクセントが生じる。
このカットでは「速→遅→速」と一瞬ではあるが、スピードに波ができていることが重要。
(付け加えると、T.B.しているので背景も等速的に縮んでいる。「加速」と「減速」でスピード感やアクセントを出しつつも、ベースには「等速」的な背景の動きを敷いている)



トラックアップに合わせて、
ブックの背景(と雲)が次から次へと前にやってくる印象的なカット。
「奥から手前」なので加速的。
加えて、ただカメラがステラを追い越すだけではなく、
追い越す一瞬にタメをつくっているので、
フレームアウトで加速する瞬間にアクセントが生まれる。



ポケットモンスターXY』OP
同様にブックを動かす系OP。
背景と被写体がどちらも動く絵は格好良い。
・減速…ポケモン
・加速…攻撃技
というように、加速と減速が併存するカット。
しっかりとアクセントがつくられている。
カメラと被写体の速度差による妙みたいなものも感じたりとか。



あさっての方向。』OP
カメラと被写体の動く速度が違うから
被写体が頑張って走ってカメラに追いつきました、という絵が撮れたりとか。
相対速度に注意して見てみるのも面白い。……ちょっと脱線した。



泡を利用した減速のカット。
歌詞の「わり続ける」の「ま」で歌も絵的にもアクセントが入るようになっている。
続く「いきん演じる」でも「へ」でアクセントが入る。

停止

これまでの動きを停止させることでアクセントをつくる。

魔法戦争』ED
加速→停止→等速という流れに注目。
“But I see through the face you've covered cynical” で歌詞のスクロールが加速していき、
“Four” で停止し、
“unleash the beast that lies inside of you”で歌詞が等速でスクロールインしてくる。
停止するところでアクセントをつくっている。



横の等速スライドから上下反転して、停止して、爆発。
“It's time now” で停止させて、そこにアクセントをつくっている。
上下反転させて急減速する演出は『ノゲノラ』OPにもあった。

高速カッティング

楽曲のテンポに合わせて、小刻みにカットしていく。
(例)
中二病でも恋がしたい!』OP
東京マグニチュード8.0』ED
BLEACH』OP10(SCANDALの「少女S」)
きまぐれオレンジ☆ロード』OP1


スピード感を出すために、あえてリズムを外して矢継ぎ早にカットしていく演出も多い。

色彩変化


PSYCHO-PASS』OP2
背景色がコロコロと変わっていくことで、映像に変化をもたらしている。
狡噛が殴られるカットで赤になるのは喰らっている感じが良く出ていてわかりやすい。



ノーゲーム・ノーライフ』OP
Aメロのカットをずらりと並べてみた。
色の変化を追ってみると、
白黒白黒……と規則的に反転していることがわかる。
色の反転によって、映像にメリハリを出す好例。



魔法戦争』ED
リズムに合わせてキャラクターの色が点滅。
等速のリズムを作り出している。
(実際には相羽六と五十島くるみが交互に入れ替わることで、色が点滅しているように見えているのだが)

おまけ 被写体を回す

人物の被写体を長尺で魅せたいときは回すべし。

ノーゲーム・ノーライフ』OP
長尺でなくとも、手持無沙汰であればとりあえず回すと格好良い。



僕らはみんな河合荘』OP
まわっているからこその長尺。
律ちゃんのご尊顔をずっと見ていられるし、
手前・奥の行き来でスピード感が演出できる。
顔が見え隠れするので変化にも富む。まわるって素晴らしい。



UN-GO』OP
おまけに何か飛ばせば、「チェス」とか「本」とか「御魂」とかを飛ばしておけば完璧。
UN-GO』のOPはこのカット以外も基本的にまわしたり、まわりこんだり、振り向かせたりすることが多かった。
演出をされた方はまわすのが好きなのだろうきっと(変な意味ではなく)。

まとめ

楽曲にもよるが、ノリの良いOPEDは得てしてアクセントに沿った映像作りをしている。
そのアクセントの作り方、アクセント以外でのスピード感の出し方など。
格好良いOPEDはこのアクセントの見極めが抜群に上手い。
それを決めた上で、カット毎の動きを決定する(何を動かすか、どう動かすか)。
加速や減速などを意識してOPEDを見てみると、
作り手の作法が見えてきて面白いと思う。