『キャプテン・アース』3話と『ラブライブ』2期OPに見る演出の共通点 シンメトリー構図のわかりやすさ

キャプテン・アース』3話の演出について。
ぱっと見て、よくわかるレイアウトというか、
その場の状況を把握しやすいレイアウト・人物配置だなあと思った。


脚本:榎戸洋司
絵コンテ・演出:京極尚彦
作画監督:斎藤英子
メカ作画監督:長野伸明


絵コンテ・演出は京極尚彦さん。
せっかくの京極さんということで、後半では『ラブライブ!』の話もからめつつ、
「わかりやすいレイアウト」というのについて考えてみる。




3人以上での会話シーンを演出でどう裁くかというときに
いろいろ手段はあると思うのだけれど、
キャプテン・アース』3話では人物配置を工夫することで
会話シーンを上手く処理しているように見えた。
具体的には、上の絵のように
シンメトリーで真ん中にそのシーンの主役を置く。
ここではダイチが主役。対するテッペイとアカリはわき役。そういう見せ方をしている。
左右にきっちり一人ずつ配置することでわかりやすさを提供する。


3話Aパートを見ていると
基本的にこのやり方で乗り切っているように見える。


真ん中に主役を配置するだけ。
言ってしまえばそれだけなのだが、
そうすることで「画面のわかりやすさ」は格段に向上しているようにみえる。


続くカットでは


このように、ダイチをはさんでテッペイとアカリが見合って会話をしている。
真ん中が主役であれば、その横にいる二人はわき役であり、わき役同士対等。
対等だから会話しているという見せ方。演出的にそういったルールを敷いている。


シンメトリーを利用することで、誰と誰が対等な関係であるかを明示する。
人物配置を違えるとこういった見せ方はできない。




このシーンも同様。
西久保司令を中心に据えて、左右にダイチたちを配置する。
あえてこういった配置をとることで
司令vs子供たちという状況を作り出すことに成功している。
一人対大勢という構図をシンメトリーを利用して、上手く処理している。





ここもそう。
司令が話し手、対するテッペイとハナは聞き手という関係を示している。
シンメトリーの構図に続くカットで
左の人物、右の人物と左右を映していくのも差別的で対等的な見せ方。
司令とは差別して、テッペイ、ハナを対等に見せる。




シンメトリーの配置を二つ用意して交互に映す。
整い過ぎているがゆえのコミカルな演出。
コミカルでありながらも、誰が会話の中心で、誰が外野かが一目見てわかる。



こんなのもシンメトリーの範疇。
シンメトリーの構図はコメディとの親和性が良いようにも見える。


強引かもしれないが、
ラブライブ』のようなステージダンスの演出が
形を変えてこういったシーンに活用されているような気がしないでもない。
演出をエッセンスで見ると、共通点があるように感じる。




この辺りも全部そう。
真ん中に主役を置くのはもちろん、
対等な人物を同じレイヤー(手前・奥)に置くというのも徹底している。
ただ単に横に並ばせるだけでは効果がうすいのだろう。



ただ横に並ばせないということでこのカット。
ここではハナの裸体を見たことに対して
三者三様の反応というのが見られるわけだが(本当は4人いるけれど)
アカリ、ダイチ、西久保司令の順にカメラから遠ざかっていく。
つまり、それぞれが対等ではないということを示している。
対等ではないから、皆が皆違った反応をしている。
というふうに捉えることができる。



OP絵コンテ:京極尚彦
OP演出:京極尚彦、臼井文明

そういった観点を踏まえつつ、
ラブライブ!』2期のOPを見てみると
多少のアレンジを利かせつつも、
シンメトリー・真ん中に主役・カメラと被写体の距離
をしっかりと意識したつくりになっていると思う。


アイドルダンスでメンバーの人数が奇数とくれば
センターを決めて、シンメトリーをダンスに取り込むのがセオリーであり美しい見せ方だ。


ラブライブ!』のOPでもその点は揺るがない。
穂乃果というセンターをどのようにしてセンターっぽく見せるか、
シンメトリーのフォーメーションをどうやって効果的に見せるかというところに
演出家の腕の見せ所がある。


そこで『キャプテン・アース』3話のような演出テクニック、
といいたいところだが、
『キャプ・アー』が1カット内にシンメトリーの構図をきれいに取り込んでいたのに対し、
ラブライブ!』の2期OPでは1つのカット、1枚の絵を飛び越えて、
シンメトリーやセンターを見せている。


例えば以下のシーン。


横にパンしながら、穂乃果が左右にいることり、海未と目配せをする。
キャプチャー絵で見ると、穂乃果はセンターにいないのだが、
通して見ると、
左右の人物に対等にカメラを振っており、センターが誰かが一目でわかる。
加えて、手前が穂乃果、奥がことり&海未とすることで
穂乃果が他とは違う扱いであるということを重ねて強調している。




このシーンも同様。
1.左右にいる人物にカメラを振る。
2.穂乃果は上手(かみて)あるいは手前にいる。
カットを越えて、シンメトリー、センターを明示する。
こういった段取りを踏むことで、穂乃果のセンター性は確固たるものとなっていく。





真ん中、左サイド、右サイドの順に映す。



1列に横並びのところから
上手(かみて)側にニョキニョキと出てくる穂乃果。
センターだからといって、画面のセンターに必ずいるわけではない。
しかし、センターがちゃんとセンターであるように見えるのは
センター以外のメンバーとの差別化を演出レベルでしっかりと行っているから。



そんな感じで、
書いたことをまとめると、
シンメトリーの構図を利用した被写体の差別化
を『キャプテン・アース』3話や『ラブライブ!』2期OPではやっているのだと思う。


その第一歩が主役を真ん中に置くことなのだが、
主役を主役たらしめるのは、その両サイドにいる「わき役」たちである、という見方もできる。
わき役を主役から一歩引かせる、あるいは前に出すとか、
左右にいるわき役を左、右と対等に撮っていくことで、
結果的に真ん中の主役が画面から浮き出てくる。


何気ないことだが、こういった演出の工夫が
ごちゃごちゃとした人物関係を整理し、
ひとつひとつの会話を聴きやすく、状況を受け取りやすくしているのだと思う。