コメディができる「私TUEEE系」とコメディができない「俺TUEEE系」

管理人は女性主人公が敵を無双するタイプのギャグアニメが好きだ。
やりすぎなくらいに無双するタイプのギャグアニメが好きだ。

例えば『パードル』とか『スーチーパイ』のOVAとか。
主人公ら当人は大して苦労もせず、
敵ばかりが辛酸をなめ続ける。
毎度毎度ドラグスレイブで事件解決。
市街地が半壊しても気にしない。
そんな「私TUEEE系コメディ」が大好きである。


今期アニメにもそんなやりすぎ感満載の「私TUEEE系コメディ」がある。
ウィッチクラフトワークス』と『ロボットガールズZ』だ。

どことなく90年代っぽいこの2作が
今期そろい踏みするというのは何かの縁を感じないでもない。
(特にそういったブームが来ているわけではないだろうが)


その一方で、ライトノベル界などでは、
今『ソードアート・オンライン』や『魔法科高校の劣等生』といった
「俺TUEEE系」が熱かったりもするわけである。


WCW』や『ロボガZ』は
ある面では、女性版『SAO』、女性版『劣等生』といっていいだろう。
強過ぎる主人公・ヒロインが敵をばったばったとなぎ倒す様は
いずれにも共通しており、痛快・爽快である。
そこにこれら「TUEEE系」の醍醐味があるのだろう。

が、主人公が強過ぎる為に緊張感のある戦いや成長を描き難いという問題があります。それ故に逆境を乗り越え努力して勝利することにカタルシスを感じる人達からは批判されることも多いです。


俺TUEEE系作品の問題点をどう克服するか - アニメごろごろ


一方で、主人公が強過ぎるがゆえ、ドラマに脆弱さも見受けられるという。
たしかに、それには思いあたる節がある。
ただ、それは「俺TUEEE系」の話である。


「私TUEEE系コメディ」は違う。
・緊張感ある戦い
・逆境を乗り越えて成長していく姿
どちらも特に求めていない。
コメディだから。出来レース上等。
敵を完膚なきまでに叩きのめすのが楽しい。
ただそれだけだ。実に単純明快。


面白い考察記事がある。

アメプロには、俗に"ジョバー"と呼ばれるポジションにいるレスラーがいる。直訳すると"仕事人"という意味になるこのレスリングビジネス界の俗語。一言で言ってしまえば、"負け役""引き立て役"のレスラーのことだ。
(中略)
さて、"ジョバー"について簡単に説明をしたところで、話を元に戻して「ウィッチクラフトワークス」の話だ。この物語の中で、塔の魔女達の圧倒的な弱さについてアメプロの演出術的な見方を加えたらどうなるか…? そうすると、彼女たちがビックリする位、見事に"ジョバー"の役割をこなしていることに気付くのである。


"アメプロ"的な視点で観てみる「ウィッチクラフトワークス」 - ご機嫌よう。さようなら。


「私TUEEE系コメディ」はある意味でプロレスのようなものである。
敵はいつだってジョバーだ。
彼女ら(あるいは彼ら)は
負け戦にも噛ませ犬のごとく果敢に挑み、
肝心なところで詰めの甘さを露呈し、
最後には「やな感じー」とか「ばいばいきーん」と言って吹っ飛ばされるのである。


主人公も主人公で我関せず、
基本的に自分の興味本位に動く。
敵なんて虫けら程度にしか思っていない。
敵の方が哀れでならない、視聴者にそう思わせる。
ここまでやってお膳立てなのだ。


だから、面白い。
やられ役とやる役のポジショントーク
カチッと噛み合い、良いギャグシーンになる。


「俺TUEEE系」はどうだろうか。


「俺TUEEE系」ではそういったコメディはあまり見られないように思う。
男性の場合、闘争本能が自然と働くとか
大切な人を人質にとられるなどのしがらみがあって
おちゃらけた方向に持っていくのが難しいのかもしれない。
どうしたって戦う時は本気になってしまう。それが男の性なのだろうか…。
(プロレスでは男同士でコメディができるのだけれど、
アニメや創作の中だと、また勝手が違うということか。)


これらは受け手が男性であるか、女性であるかによっても変わってくるもののようにも思う。


が、いずれにせよ、何か物語を創作しようといったとき、
誰を男性にして、誰を女性にするかといった問題に必ず直面する。
適材適所。そこにジェンダーフリーはないといっていい。


コメディができる「私TUEEE系」とコメディができない「俺TUEEE系」。
「TUEEE系」の定義が判然としないので、あまり深くは考えられないけれど、そんな印象。


ちなみに、「私TUEEE系」がコメディをしなかったらどうなるかなと考えたら、
(めっぽう強いヒロインということで考えた結果)
最終兵器彼女』とか『イリヤの空』とかセカイ系方面に行ってしまった。
(この辺り、さまざまな異論があるとは思いますが)
「私TUEEE系」はコメディにしろシリアスにしろ総じて古めかしいようなのは気のせいか。


いずれにしても、時代は「俺TUEEE系」ということで。
特に今に限った話でもないけれど。