長井龍雪が描くOP/EDの演出的魅力 その2

前記事のつづきになります。


今回取り上げる作品は
・『とある科学の超電磁砲S』ED2(2013年)
・『とある科学の超電磁砲S』ED1(2013年)
・『マギ』OP1(2012年)
・『ココロコネクト』ED1(2012年)
の4つ。


ということで、
長井さんのフィルモグラフィーを新しいものから順番に遡っていきつつ、
演出的な見どころを探っていきたいと思います。

とある科学の超電磁砲S』ED2(2013年)

絵コンテ・演出:長井龍雪
作画監督・原画:浅野直之

青と緑のカラーを強く出す撮影はいつもながらの長井フィルター。
平野と空との境界線もいい感じに決まっている。
ただそれだけだと殺風景なので、
美琴らのバックにプロペラ風車を並べている。
まあ、冷静に考えたらこんな本数、どう考えても密に並べすぎなんですが、
演出的にはこれで良い。
人物の背後などにフェンスや壁があると絵的に決まる、というのと同じ理屈。



白い背景に、風船というアクセサリー。まさに長井演出。
4人で視線を向け合うというのも叙情的で、長井さんお得意の、といった感じ。
向き合う動作は時間がかからない。1カットの時間を短くできる。それが良い。
Aサビ終わりに、この短い1カットをポンと挿入することで、
テンポよくBサビに移行しているように感じられる。



ポージングひとつとって見ても、
シンプルでありながらインパクトがあるのが長井演出。
目線は携帯に向ける。これは想いが誰かに向かっているということ。
そうそう簡単にカメラ目線になんてさせない。
あと、肘をついているが、机は書いていない。省略している。
画面の枠に肘をついているんですね。
絵はなるべくシンプルにシンプルに。
細かいけれどこういったこともテクニックの一つ。



ポージングその2。机に腰掛け。
無闇に動かす必要のない、静止していながら決まるポージング。
このように、人物の背後に机とか壁とかフェンスとか配置しておくと、何かと使えます。



ラストカットは多分にもれず、アクセサリーでしっかりと締める。

とある科学の超電磁砲S』ED1(2013年)

絵コンテ・演出:長井龍雪
作画監督田中雄一


画面の色使いが面白い。
青モノクロ系の処理っぽいけれど、青の光源にモノクロ撮影とか、
色温度を高めにして撮影で作り込んでいるのかな。
バックに光があるので、輪郭光もちゃんと描いている。
背景全面にわたって格子窓を使うアイデアも奇抜。
これは『黒執事』2期OP(絵コンテ・演出:長井龍雪)でも使われていましたね。
こういう格子、フェンスっぽいのを使うのが良いんです(←また言ってる)。



美琴とシスターズの二人をモチーフにしたED。
背を向け合う二人。
この二人を向き合わせるまでの物語をED内で描く、
と考えるとシンプルでわかりやすい。



サブタイと背景を白黒で決めてくるのは『ストブラ』ED2っぽい。
上下黒帯が入ったシネマスコープな点も一緒。




互いに向き合う瞬間。
ここでしっかりカットを割るのが長井さんらしいなと思う。
カットを割っても両者視線がしっかりと繋がって見える。
カットを割ってまで一人ずつ映すのは、それぞれに寄りたいから、ですね。
カメラ的にも、彼女らの内面にも寄りたい。
こうすることで映像的により味わい深いものとなる。

『マギ』OP1(2012年)

絵コンテ・演出:長井龍雪
作画監督錦織敦史 エフェクト作画監督橋本敬史
総作画監督:赤井俊文


先ほどと同様、しっかりとカットを割って、向き合う。
これぞ長井演出。




バックショットで、手前から奥へ移動していくのも長井演出らしい。


長井演出といえば、その撮影処理にスポットがあたりがちだけれど、
『マギ』OPはその点、ひと味違う。
撮影以外で勝負しているようなところがあって。
特にカットまたぎの視線誘導。これが最高に決まっている。







アリババが向いた方にアラジンがいる。
アラジンが向いた方にモルジアナがいる。
目線はずっと左向き。
向いた先には誰かがいる。
カットをまたいでの視線誘導。
このカッティングがテクニカル。





視線誘導を続けて続けて、
そして最後に3人揃ったカットが入る。
「皆が出会った」ことを示す、良いカット。
カットを割って割って、最後に一つのカットにおさめる。


こういったカット割りや
時にはカメラワークも利用した視線誘導の持っていき方の上手さ。
それが『マギ』OPでは至る所で見受けられる。
スムーズにスムーズにカットが結ばれていくことを実感できるOPだと思う。

ココロコネクト』ED1(2012年)

絵コンテ・演出:長井龍雪
作画監督:赤井俊文


前後カットで人物がパッと出現する、ジャンプカット?のようなシーン。
こういった切り替えは『あの夏』OPや『凪あす』OP2でも似たようなシーンがあった。
全員後ろ姿、白帯なのでわかりにくいが横長のシネマスコ−プ。
この辺りは長井演出では定番所か。




カットを割ることで、「伊織」と「それ以外」という関係性を示している。
これはシンプルでわかりやすい。
構図的にも一点透視で変に気をてらっておらず対称性がある。
この点もシンプルでわかりやすい。



柵とかフェンスとかを設置すると
ポージングや構図が上手く決まって良いですね(また言ってる)。



それから、色合いがどことなくノイズがかかっているようなのが特徴的。
(キャプチャー画像だとわかりづらいかもしれませんが)
そういうカメラで撮っているということでしょうか?何のカメラだ?
キャラの色の塗り方がスティップルっぽくなっているというか。
全く検討違いなこと言っていると思うのですが…。



そうそう。
とらドラ!』OP2の最初のシーンの塗り方、撮影と似ているなあと思いました。
ノイズがかかったような、こんな感じ。何て言うのでしょう。

結び

今回は絵的な長井演出の特徴に加えて、
カッティング的な特徴についてもまとめてみました。
・カットをまたいだ視線誘導
・カットを割ることでの人物描写の強化
など、カッティングについてはまだまだ考えられる余地は多分にあると思います。


これまで指摘してきた点を思い出しつつ、
長井さんの代表作である、
『あの夏』、『あの花』、『とらドラ!』のOPEDなどを見ていただければなあ…とか。
この3作品について記事で触れないと、なんだか尻切れトンボっぽくもありますが、
まあ、書けることは全部書いたと思いますし。ごちゃごちゃと書き過ぎたと思いますし。


もし「長井OPED演出その3」があったらそのときはまた。
ということで。