『Wake Up, Girls!』1話の演出を見る

『WUG』1話見ました。
1話を見る前に、劇場版もちゃんと見てきました。


ただ、劇場版は見ても見なくても特に問題はないように思いました。
話の内容は1話でもだいたい説明されていますし。
劇場版でも1話でも「アイドルになる(を続ける)こと」を決意するという
一番肝のところを描いていたので
話としては問題なく成立していたんじゃないかなと思います。


『WUG』はこのように常に選択を迫られる、
つまり、その時々で「アイドルを続けるか/やめるか」の選択を
迫るような話になるように思います。
アイドルの舞台裏やそこでの挫折、復帰などを描きたがっているようですし。
そのとき、メンバー一人一人がどう判断するか、それは人それぞれ。
そこに彼女たちの生き様を感じ取ることができるのではなかろうかと。
そんな話の展開、キャラの掘り下げに期待しつつ。


#1
脚本:待田堂子
絵コンテ・演出:山崎雄太
作画監督:宍戸久美子、高瀬さやか、小林恵祐
総作画監督:近岡直


1話は1話にあるまじき地味さで
アイドル活動は一切なし。時期は正月。
WUGメンバーのプライベートを映すだけ。
天気もどんよりと曇っていますし。
何ですかこれは「サムデイインザレイン」(『ハルヒ』)ですか。山本監督ですし。
それとも「梅雨ノ空・玻璃ノ虹」(『ソラノヲト』)でしょうか(←管理人推しの曇りアニメ)。


曇り空は時に人の心を素直にすると言いますか、
胸の内を顕わにする、その後押しをしてくれます。演出的には。
特に1話Aパート、ここは対話劇がメインでした。
天候は、対話劇にはもってこいの曇り空。
二人の何気ないやりとりから、心の内にある想いを台詞に乗せていく。


演出的には、どう対話させるか、というところが肝でした。
というわけで、対話シーンをピックアップしてみますと、



まずCM明けから会話会話会話。
演出的に重要なのは
会話のシーンであえて向き合わずに「横並び」。これです鉄則。
1話ではなかなかしつこく出てきました。
何気ないポジショニング、ただ横並びしているだけのように見えますが、
そうすることで(向き合わないことで)、
気が知れた仲だというのも伝わりますし
率直な気持ちをパッと抵抗なく言葉に出来たりもする。


向かい合ってしまうと、どうしても相手に気を奪われますので、
自分の胸の内をさらっと出しづらくなるように思います。



ここでも横並び。向かい合ったりなんて、させませんよ。
緊張感のない何気ないやりとり、日常のワンシーンを切り取る。
この辺りは、BGMは流さず、ずっと環境音で勝負していっています。それも面白い試みですね。
人混みでは喧騒を入れつつ、
人気のあまりないところでは、じゃあどうするか。
「車の走行音」ですね。車を定期的にタイミングよく通していくことで環境音を入れていくという。




ここも横並び。わざわざ横並び。
今後もアイドルの活動を続けていくかで葛藤するシーン。
横顔でその胸の内を語る佳乃。



佳乃の言葉に振り向きレスポンスする夏夜。
顔を正面に向ける。



一度向き合って、



今度は夏夜が横顔を向き、自分の想いを語り始める。
正面顔と横顔を使い分けることで、
台詞の内容と絵(挙動)をしっかりとリンクさせていきます。
「横並び」だと、こういった演出が出来るので良いですね。



はい、未夕参上。
ムードメーカーでいじられ役で、「動き」担当。
会話ばかりで映像的な快感(アクションやダンスなど)の少ない回で
こういう動ける子が一人いると、良いアクセントになりますな。



先ほどとは打って変わって、「向き合う」ポジショニングに。
ここは未夕が一人で空回って、つっけんどんに扱われているシーン。
(未夕もなかなか良い事言っているんですけどね……)
状況に合わせて、見せ方もしっかりと変えていく。
ここはボケとツッコミを分けるということで「向き合う」一択。



真夢の夕食シーン。



家族は「向き合う」と言いますか、友達とはまた違う距離感。
真夢を気にかけ、しっかりと正面から見つめて話しかける祖母と、
うつむき加減に、今の幸福を噛みしめているように見える真夢。
互いに向き合っているので、祖母の愛情を真夢が一身に受けているような印象です。


多弁な祖母に対して、
ここでの真夢は言葉数少なく、台詞は「うん」だけ。
あとは頷いたり、味噌汁をすすったり。
ここのやりとりは好きですね。
もう一言二言入れたいところを、ぐっと堪えて台詞を排除していく。
台詞のないところ=間をつくる試みでもありますね。
アイドル活動を再開する喜びと不安、加えて家庭環境はままならない。
なかなかその想いもまとまらないし、まだ心の内に潜めておきたい、そんな印象を受けます。



茶店のシーンのラスト。
真夢のスマイル振り向きでシーン終わり。
シーンのラストカットで真夢の笑顔をバッチリ映す。これは良いひいきです。


しかもガラス越し。
被写体から一枚ガラスを挟んで距離が離れるわけです。
その瞬間、真夢のことがわからなくなる。
アイドルの復帰に単純に喜んでいるわけではなさそうだ、というのが見えてくる。
真夢を見せるときに、こういった勝負カットを挟める巧さです。
こういった演出は、鏡やガラスに被写体を映すような演出にも通じるものがあるかもしれません。


それから1話の内で何度か出てきた真夢のスマイルシーン。
真夢が笑うと話の転換だったり、シーンが切り変わったりするんですよね。
シーンエンドには真夢スマイル。良い真夢ひいき。
こういったカットの構成が、真夢が主人公なんだなあと思わせる。



そんな感じで。
2話以降にも期待しつつ。
今期まだ『WUG』しか見れてないので、他のアニメも頑張って見ます。
余裕があれば、記事の方も定期的に書いていきたいですなぁ……。