ウシロシンジの演出 黒澤明的なパンフォーカスなど
1.望遠レンズ+パンフォーカス
『銀河機攻隊マジェスティックプリンス』6話(絵コンテ・演出:ウシロシンジ、矢野孝典)
『ましろ色シンフォニー』3話(絵コンテ・演出:ウシロシンジ)
ウシロシンジさん的な縦の構図。
被写界深度の深さがポイント。
パンフォーカスであるだけなら
普通にあるとは思うのですが、
ウシロシンジさんの場合は
パンフォーカスに望遠レンズを使っている点が特殊です。
いわゆる黒澤明監督的なパンフォーカスで。
何が何でも望遠レンズでピントを合わせる。
広角でやればいいところを、
わざわざ望遠レンズを使用して
ボケないように光量をガンガン使って、
全員の顔にピントを合わせる。
何故そうするのか。
それは、望遠レンズにする方が
温かみのある絵になりやすいからです。
広角だとキューブリックっぽくなりますので。
使い分けが重要ですな。
ウシロさんはときどき、
黒澤明を意識した絵作りをされているように感じる時があります。
一方でフォーカス送りを使用するカットもあることから、
同じ望遠レンズでも、
シーンに合わせて、意図的に被写界深度を調整していることが伺えます。
その辺りも黒澤明的です。
上段:『Canvas2 〜虹色のスケッチ〜』22話(絵コンテ・演出:ウシロシンジ)
下段:『恋と選挙とチョコレート』6話(絵コンテ・演出:ウシロシンジ)
同様に、フォーカス送りの例。
1カット内で誰を見せて、誰を見せないのかというのをしっかりと提示する。
そこに演出家の意図が込められています。
1カット目と2カット目でフォーカスする対象を変えたり。
どちらも手前ではなく、奥にフォーカスを合わせているのが技巧的で、
視聴者の視点を意識させるようなカットに仕上がっています。
2.縦移動・横移動
このような縦で移動させる演出もウシロさんらしいと思います。
手間のかかるカットだと思うのですが、
画面内の左側にいる主役にフォーカスしつつ、
去っていく人物・やって来る人物をもう一人の主役として
対比的に撮ることができるのは
この構図の魅力的なところだと思います。
こちらもウシロさんの絵コンテ・演出回ですが
こういった横で移動させる見せ方もあるのだ。
ウシロさんはどちらもやられるのだ。ということでして、
その使い分けをされているというわけですね。
横移動の場合、縦移動よりも、主観性が失われ、客観的な絵になります。
あと、さり気なく全員が「かみて退場」もしくは「しもて入場」というのも
ルールに反していて、意図的なものに見えます。
「しもて退場」、「かみて退場」にすると、
絵が安定して良くないということなのかもしれません。
3.左右対称性
横の構図で、人物と背景を左右対称に作り込むのもウシロさんらしいです。
真ん中にぴーっと線が引かれていて、人工的な左右対称性をつくる。
モンタージュの流れの中で、こういったカットがポンと入り込んだときの緊張感、
その流れの作り方がウシロさんの独特の味になっているように思います。
4.ウシロシンジは人を見せたいのだ!
『俺たちに翼はない』7話(絵コンテ:ウシロシンジ、及川啓、演出:北條史也)
印象的なカット。
アップ、アップ、アップで連続的に攻めていく。
この回は及川啓さんとの共同絵コンテ回でしたが、
このシーンは恐らくウシロさんのパートだと思います。
ウシロさんの演出すべてを通して言えるのは、
「人を見せようとしている」ということです。
当たり前なことを言っていると思われるかもしれませんが、
このカットでは誰にフォーカスするのか、
このカットでは人を主観的に撮るのか、客観的に撮るのか。
そういった観点をとても大事にして演出されているような印象があります。
黒澤明監督もそのような方だったと私は思います。
そのためであれば、リアルな描写だって捨てられる。
普通に撮れば、ボケる被写体もディープフォーカスで決めてやるぜ。
それでちょっと不自然になったって人物がちゃんと撮れれば構わないぜ!
という、気概がウシロさんの演出には時折見られます。
そこにアニメらしさが感じられます。
リアルを捨てることで、
ほどよく取捨選択することで、
物語のメッセージは紡ぎだされていき、
私たちに伝わるわけです。
最後の方、話がずれたような気がしますが、
ウシロシンジさんの演出について思うところを
書いてみました。
ウシロさんの記事を今書いたのは
マジェプリを録り貯めていて、今週やっと6話以降を見れたからです。
もう最新話まで見ましたよ。ちゃんと着いていってますよ。
けど、夏アニメはまだ一つも見れていないですよ。
もっと、時流に乗った記事を書きたいものですね。
頑張ります・・・。
そんな感じで。
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